取り組みの背景は?
無尽蔵でクリーンな風力エネルギーを利用した風力発電は、純国産のエネルギー源であり、また運転時にCO2などを排出しないなど地球環境問題への対応の観点から、導入普及拡大が期待されています。風力発電の導入は、欧米で積極的に進められてきたのに対して、日本での本格的な普及は遅く、近年になってから急速に増加しています。
しかしながら、わが国では離島や山岳地など急峻な地形が多く、台風・強風や落雷など、特有の立地・自然環境であることから、風力発電の導入をさらに拡大していくためには、これらの条件に適合した風力発電システムと、風車の立地点検討をより容易に行うための風況予測方法の開発が必要と考えられました。
また、風力発電の導入拡大対象として、日本では数多くの風況に恵まれた離島が存在しますが、様々な課題もあります。そこで、これらの課題に対応した離島に適した風力発電技術の開発と実証試験を平成11年から平成14年にかけて行いました。

一方、風況予測方法の開発では、急峻な地形でも風車の立地点検討のための風況予測計算が行えるシミュレーションモデルの開発を行い、平成15年には、その計算結果を全国の風況が容易に把握できる風況マップとしてNEDO技術開発機構ホームページに公開しました。
これらの開発・実証結果は、日本全国への風力発電の導入促進に貢献しています。

どんな研究?
局所的な風況をシミュレーション可能
風力発電に最適な立地点の選定には、風況の概要を把握することと、精度の高い風況予測を行うことが必須となります。しかし起伏が激しい日本の地形で風況予測を行うには、従来の海外製の計算モデルでは不十分でした。そこで、複雑な地形でも局所的な風況を精度よく簡便な操作で計算可能なシミュレーションモデル(シミュレータ)の開発と、その計算結果をデータベース化し風況の概要をユーザーが把握できる500mメッシュの局所風況マップを作成しました。
シミュレータにより風況計算を行うには、地形条件(地形図データと植生分布データ)と気象条件(GPVデータ:気象庁が作成している様々な気象要素の20kmメッシュの格子点データ)を入力して行います。出力として、高度別の最大10mメッシュの年平均風速、風向・風速別出現頻度、風速階級別出現頻度などがマップとグラフで表示可能です。
この出力結果は、傾斜度5%以上の地形においても誤差が約10%以内で、一般的なコンピュータでも計算・表示が可能です。



参考) 局所的風況予測モデル LAWEPS http://www2.infoc.nedo.go.jp/nedo/
離島用風力発電システムの開発
近年の環境・エネルギー問題から、日本でも風力発電の導入拡大がなされています。日本は風力資源の点では恵まれていますが、離島や山岳地などに設置するとなると考慮すべき問題があります。既存の小規模な電力システムとの併用、台風など強風や突風への耐性、輸送や建設上の制限に対しては大型重機が不要で、なおかつ低コストな風力発電システムにしなければなりません。また、電力消費が小さい地域では、風力発電の割合を大きくした場合に電力供給が不安定になる可能性があるため、風車自体の出力を安定化させることと、既存の電力系統の発電システムにより出力を補完して協調運転を行う方法を開発しました。
本研究では、これらの技術により離島の消費電力の大きさに適した、出力100kW、ロータ径22m、タワー高さ24mの風力発電システムの設計開発を行い、実証試験による目標性能の確認とその有効範囲を確認しました。


伊是名島での風車の建設
100kW級の風力発電システム自体は既に実用化段階にありますが、離島に普及させるためには、実際の場所での実証試験が必要です。試験場所の選定にあたっては、沖縄の離島を対象に環境・風況・電力系統などの調査を行いました。また、電力会社や地元自治団体との調整の結果、最終的に沖縄県伊是名島に実証試験サイトを設置しました。
平成11年から平成14年までの実証研究の結果、設置に際して大型重機(20tonクラス以上)が不要なことを確認するとともに、既存のディーゼル発電とのハイブリッド運転を行い、離島の小規模な電力系統においても安定的に運転できることと、目標コスト20円/kWhを確認しました。
また、既存の電力系統に対して風力発電の割合を40%程度にした場合の電力品質(電圧・周波数など)に与える影響を、どの程度緩和できるかという性能試験を実施しました。 これにより、日本の離島などの環境においても導入普及の促進を図ることのできる風力発電システムが開発できました。



- 注1) 系統連系比率 : 発電電力のうち風力発電の占める割合
- 注2) 最適な条件(発電規模、風況など)での最大値。ディーゼル発電機の出力変動制御を併用。
- 注3) 設備利用率30%、工事単価15万円/kW、金利 6%の場合。対象地域は、重油ディーゼル発電機により、発電コストが40円/kWh程度以上になるような中小規模離島を想定。
今後の展開は?
日本における本格的な風力発電は始まったばかりです。1998年からNEDO技術開発機構による本格的な支援がスタートし、採算性の高い大型風車の普及や2003年に施行されたRPS制度(Renewables Portfolio Standard:電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法)による電力買い取りなどと相まって、事業として風力発電を行う意欲を風力発電事業者にもたらしました。現在、日本における風力発電の9割がNEDO技術開発機構による支援となっています。
日本のように国土が狭く複雑な地形条件がもたらす不安定な風況下で、より風況の良い場所を見つけて風力発電を行うことはたやすいことではありません。また、その他にも風力発電の導入促進には課題がありますが、これを解決して導入普及を促進することを目指しています。

今後の展開としては、風車のさらなる大型化の進展などによるコスト削減と導入拡大が見込まれます。そのため、前述の問題点解決を進めていく一方、立地点が制約されるわが国においては洋上風力発電など、風力発電の導入方法の検討もしています。

このテーマの技術解説:- 風力発電って何だろう