取り組みの背景は?
化石燃料の枯渇や地球環境問題を背景に、クリーンで再生可能な風力エネルギー利用への期待が高まっています。風車の大型化、大規模ウィンドファームの建設が進む一方、小型風車も徐々に一般社会に浸透し始めています。公園の街灯の上や山小屋の前でクルクルまわる風車を見ると、自然の風を感じることができて心が和むことでしょう。小型風車をより身近で実用的に利用するためには、弱い風でも効率よく利用エネルギーに変換することが重要です。
水力発電がダムによって水のエネルギーを集中させることで成り立つように、風力発電においても、地形や構造体の流体力学的性質をうまく利用して風エネルギーを集中させることができれば、風車の発電能力は飛躍的に増大します。そこで風を集めて加速させ、より強い風を風車翼にあて、発電効率を大きく高める新タイプの集風式小型風車の研究開発に取り組みました。

本研究開発により、風力発電の低いエネルギー密度と不規則性という短所を克服してクリーンで無尽蔵な自然エネルギーとしての長所を量・質ともに大いに発揮することができる高出力の風力発電システムの実現を目的としました。

どんな研究?
高出力風レンズ風車の開発
風車は風力エネルギーを別のエネルギーに変換するため、効率よく風を受けることができれば利用エネルギーも大きくなります。この時の発電量は風車が受ける風速の3乗に比例します。そこで虫メガネで太陽光を一点に集中するように、風を集中させる集風体「風レンズ」の研究開発を行いました。これは風車を覆うディフューザとその出口周囲につけたフランジ状の「つば」から成ります。実用化を考えて単純な構造体となっています。この集風式の新しいタイプの風車を「風レンズ風車」と呼んでいます。
風レンズ風車は同じロータ径の通常風車に比べ、約5倍の高出力となることが、風洞実験やフィールド試験で実証されています。小さなロータ径で高出力が得られることから、低・中風速地域やこれまで設置が困難な地域にも拡張できます。

集風加速体(風レンズ)の研究開発
風エネルギーの集中化を図るために、風車を筒状の中空構造体で覆うことを考えました。風の中にノズルタイプ(縮小型)とディフューザタイプ(拡大型)の2種類の中空体を置くと、常識的にはノズルタイプの出口が最も風が速くなりそうですが、実験の結果はディフューザタイプの入口で風が最も速くなることがわかりました。

ディフューザの長さを長くすればするほど、その入口での風速は大きくなります。しかし、実用化を考えた場合、ディフューザの長さはある程度短くする必要があります。短いディフューザの入口でさらに風を速めたいと考え、ディフューザ出口の周囲にフランジ状の「つば」を取り付けました。その結果、はるかに大きな増速効果を得ることができました。

集風加速装置の風増速メカ二ズムは、つばを付けるとその背後の風下側で強い渦が形成され、ディフューザ出口周辺の空気圧が非常に低くなります。この低圧域によりディフューザ内部に速い流れが引き込まれてきます。風レンズ風車としての性能向上を目指して、ディフューザ入口形状、ディフューザ長さと全体形状、開き角度、つばの最適高さを検討し、さらにディフューザ内で高性能となる風車翼の設計など種々の検討を重ね、集風加速体(風レンズ)としての最適化を行いました。

今後の展開は?
本プロジェクトで実用化した風レンズ風車は、小型で500W〜3.5kW(定格風速12m/s時)の出力を得られますが、より実用的な風力発電の促進のために数10kWから数100kW級の中型風車への適用を目指しています。中型風車への適用を考えて、集風構造体(風レンズ)はほとんどリング状に見えるほどコンパクトなつば付きディフューザとなります。この超コンパクトなつば付きディフューザの最適形状を研究開発しており、これにより従来機に比べ2倍以上の出力増加された中型規模の風レンズ風車が登場することになります。
また小型化・低風速でも出力できることから、従来の設置条件である風況が良い、機材を搬入できる場所、景観被害がないこと、などが緩和されるため、より風力発電の導入促進が可能となります。

風力発電の有効利用には高効率な風車の開発に加えて、やはり複雑地形やビルに囲まれた市街地においても、風に恵まれた場所を捜すということが必要です。そのためには局所的な風況場を高精度に数値計算する風況シミュレータ(RIAM−COMPACT)を同時に開発しています。これを用いればピンポイントで最適風況地点が選定できるようになります。
高効率風車の開発と局地風況予測の高精度化を研究開発することにより、無尽蔵でクリーンな風力エネルギーの利用が大きく飛躍することが期待されています。

このテーマの技術解説:- 小型風力発電って何だろう
