取り組みの背景は?
ハードディスクはこれまで主にコンピュータの記録装置として使用されていましたが、これからの情報化社会では携帯用音楽機器やデジタルカメラなど、さまざまな用途に使用されはじめています。このため、更なる大容量化、小型化等が求められており、記録密度の向上はその鍵を握る技術です。
1995年度の本事業開始時、製品段階では記録密度は1平方インチ当り1ギガビット(Gb = 10億bit)程度に過ぎませんでした。しかし、産学連携による磁気ヘッド技術、垂直磁気記録技術などASET(技術研究組合超先端電子技術開発機構)での研究により、2001年度の事業終了時には一挙に40ギガビット以上にまで記録密度を向上させることが出来ました。
これらの成果は、大学からの技術提供、企業の実用化基盤と技術開発、国としてのプロジェクト企画・運営が見事に実を結んだものでした。そして、この功績により、平成17年度産学官連携功労者表彰において経済産業大臣賞を受賞しました。

NOTES
- 情報量の単位
- コンピュータが扱う情報の最小単位は、1ビット(bit:b)で表されます。
またコンピュータの情報の記憶や処理伝達はバイト(Byte:B)単位で表され、1バイトは8ビットとなります。
記録密度を大幅に向上させたことで、特にノートパソコンや携帯音楽機器などに使用が拡大している小型ハードディスク分野で、日本企業が90%以上のシェアを占めるに至った原動力となりました。

どんな研究?
高感度GMRヘッド技術
面内磁気記録技術では、高感度GMR(Giant Magneto Resistive:巨大磁気抵抗)ヘッドの開発、磁性膜を微細化するための高度化した超高真空配向成膜技術など、容量拡大に向けた基盤技術を開発しました。
GMRでは、自由層の磁化の向きは磁気ディスクから来る外部磁界と同じ向きとなります。磁化の向きが一定の固定層に対して、自由層の磁化の向きが逆向き(反平行)の時は、電子(e-)の動きが界面で阻害されるために電子が通りにくくなります。つまり、電気抵抗が大きくなります。しかし、自由層の磁化の向きが同じ(平行)の時には、界面での散乱が起きないため抵抗は小さくなります。この抵抗値の変化から外部磁界の向きを高感度に検出することが可能となりました。
超高真空高配向成膜技術では、成膜時の真空度を向上させることで、整ったGMR膜の形成を可能とし、ノイズの低減につなげました。


発想と磁気の向きを90度転換した垂直磁気記録方式
従来の面内磁気記録方式は、磁石を水平に並べて記録再生を行ないます。しかし、容量拡大に伴う記憶領域などの微細化は、磁気情報保持が不安定となる熱揺らぎ現象の問題があり、限界が予想されています。
そこで、これらの問題を解決するために、磁石を垂直に並べることで容量拡大が可能で記録も安定して行なえる垂直磁気記録方式を研究開発しました。垂直磁気記録方式を実現するために、ヘッドの微細化による残留磁化を細かく裁断する磁区制御や、ナノテクノロジーを用いたヘッドの開発、磁気コアに強い磁場を発生させる高飽和磁束密度材料の採用など、多くの研究開発の成果が採用されています。

今後の展開は?
本プロジェクトでの垂直磁気記録方式や面内磁気記録方式の発展により、目前の数十〜数百Gビット平方インチの技術的問題を克服しました。この成果はすでに製品化されつつあり、また日本製小型ハードディスクの競争力強化につながっています。
しかしハードディスクを含めた磁性系ストレージは、大容量化、小型化、高速化、低消費電力化などさらなる高度化が求められています。この要求に応えるための記録用技術のキーテクノロジーとしては熱アシスト・パターン媒体記録再生方式や光技術の研究開発が必要となり、再生用技術としてはCPP-GMRヘッド(検出電流を、成膜面に対し垂直方向に流す方式)やスピントロニクス・ヘッドの研究開発が必要と予測されています。


このテーマの技術解説:- ハードディスクってなあに?